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プレイボールとキャプテン(その1:画質について)

「プレイボール」の主人公たちの中学野球時代を描いた「キャプテン」のアニメ版を見たくなったが、レンタルはまったく見つからないのでとうとう、DVD-BOX を購入してしまった。
こちらは時代柄当然すべて手作りのセルアニメになる。内容はターゲットが異なるので一概には言いがたいところだ。しかし画質について言えば、率直に言ってキャラクターの躍動感、野球の動きとしての自然さなど、「キャプテン」が勝っている。「プレイボール」はいくつか非常に完成度の高い場面も含んでいるが、特に試合の動きの多い場面に問題が多い。

製作にかけられるコスト

例えばケーブルテレビのアニメーションチャンネルのプログラムを見てみる。朝から晩までありとあらゆるジャンルの新作アニメーション番組が並ぶ。レンタルビデオ屋を覗いてみれば、何個もの棚にいっぱいのアニメーションソフト。それぞれのDVDに30分番組何本分かの画像が納められている。
これはやはり乱造ではないか?
ビデオソフトの収益はどれくらいあるのかよくわからないけれど、一本一週間で何百円かのレンタルとして消費されて、それほどのコストがかけられるとも思われない。
海外への依存も相当進んでいると聞くが、かけられる人件費がどんどん小さくなっていることを物語る。
「キャプテン」はゴールデンタイムの、少年たちをターゲットとしたテレビ番組として製作された。すくなくとも番組が放映された系列局ではかなりの力を込めたはずだ。
製作にかけられるコストは小さくなる。それをデジタル技術で埋めているのであろうが、あとで考えるように、それにも限界があるだろう。
「キャプテン」にはやはりかなりの技術と人手が込められている。純国産であることも重要だろう。「プレイボール」の現代にはもはやその条件はない。これが動画の質に現われていることは否定できない。
「プレイボール」が果たしてゴールデンタイムのアニメとしていまの子供たちに受け入れられ得るか否か。僕は残念ながら否定的になる。大人はアニメを(時にこういった背景をふまえて見ることも含めて)自分の中で「説明」してしまうことができる。このことによって物語の本質的なテーマを受け取ることが可能である。しかし子供たちにはおそらく、僕ですら鼻につく動きの不自然さを許してくれないだろう。

中途半端なデジタル技術の限界

デジタル技術は人の手を介さずに大量の絵を生成するための技術だろう。「プレイボール」もセルを動かすのにデジタル技術を使っているようだ。しかし、中途半端なデジタル化では、むしろある種の手抜き感を視聴者に与える。打った後のバットが、重心が等速運動をする等速回転をしながら飛ぶ。あるいは、3塁線を破ったボールが淡々と小さくなりながらまっすぐに(ファールグランドに切れることなく)レフトフェンスに到達する。谷口の復帰第一打席のライトオーバーの打球は一昔前のビデオゲームのボールの軌跡のようだ。放物線の方程式がちらちらとする。
野球のボールの動きは一見、最もデジタル化に向いているかのように思ってしまう。しかし、ボールの挙動をよく考えてみると、いかにその動きを表現することが困難であるかに気づく。ボールの動きをつかさどる物理は、重力や空気抵抗に加え、回転に伴うボールの周辺の圧力場変動などに左右される。その上に、いったん着地すれば砂や芝生といった地上の物体と相互作用をする複雑な回転する物体を解析しなければならない。なおかつこれを正確に位置として追うだけではだめで、回転や勢いを絵の中で表現しなければならない。
一枚一枚書くしか仕方がなかった昔は、これをともかく丹念に漫画的に表現した。現代ではデジタル化に中途半端に頼ってしまうことによって、残念な部分が出てしまうように感じられる。ボールの動きも人の動きも本来たいへん複雑で、アニメーションの中で十分な表現をしようと思えば相当な工夫が必要だろう。中途半端なデジタル技術では不十分だ。
安上がりでうまくセルを「自然に」つなぐためのプログラムができればいいのだが。目標は、「キャプテン」オープニングの独特のキャラクターの動きを自動生成するプログラムだ。カメラの動きもキャラの動きも「ガタガタ」だが、それがキャラの心を表現し、迫力を生んでいる典型のような絵だ。

伝統的なセルアニメの威力

一枚一枚手で動かしていた時代の価値を再認識するしかない。とはいえ、現代はこのような丹念な仕事を行う条件をアニメ界の大勢から奪った。現実には当面、中途半端であるとしてもデジタル技術に頼るしかないだろう。
例えば物量にありあまるディズニーのデジタル技術は中途半端ではないので、動きが非常にリアルである。しかし僕は、どうもこれが日本アニメ界におけるデジタル技術利用の目標ではないのではないかと思う。実写に近いものではなく、デフォルメされたアニメーション技術にむしろ魅力を感じる。口パクでもその口が十分に心を表現していればそれでよいではないか。谷口の口は閉じていればただの曲線。それを何回どの角度でうねらせるかによって表現が生まれる。谷口の目は二つの閉じた曲線とその中の小さな瞳だけなのだ。これをリアルな唇やリアルな目で置き換えても仕方がないことは明らか。
安上がりでかつより自然な表現ができるアニメーション製作のためのデジタル技術なんて不可能?

[2006/10/01追記:]

関連するいい記事を見つけた。日経ビジネスonlineの記事である。「海外流出続くアニメ産業・無策が生んだ若手不足」は、日本のアニメーション技術の現実を示している。キャプテン・プレイボールの制作に関わっている「エイケン」という企業は実は、日本のアニメーション技術を支える非常に重要な位置にいることを知る。

日本の有力制作会社で、唯一従来の方法を守っているのは、今年38周年を迎える長寿番組「サザエさん」を制作するエイケンだけだ。この番組ならではの「日本的な味」にこだわり、東京都荒川区の本社では、約50人の社員が今でも手作業での制作を貫いている。この番組の制作に携わっているのは、社外の協力者も含めて合計約130人だが、人材の入れ替わりがほとんどないという。


みんな。がんばって、サザエさんを観ましょう!(谷口風に)

「プレイボール」のアニメーション制作はマジックバスが担当しており、デジタル化が進んでいる。しかし、制作にエイケンを残しているところに、スタッフのこだわりを見る。
また逆に、エイケン制作アニメとして今Wikipediaにリストされているものは、「サザエさん」を除くと「プレイボール」しかないことにも驚かされる。「プレイボール」・「キャプテン」ファンとしてはこの面でも大変うれしく思う。
いつか元気があるときに別エントリーをたてたい。
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象(Zoo)

  • Author:象(Zoo)
  • 理系研究者です。科学好き、やや社会派、体を動かすのも好きです。

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